有機金属化合物製造の鍵となるベーパーテック社のポンプ

英国ケンブリッジ大学の化学部教授、スティーヴン・V・レイ氏の研究グループが専門誌『Organic Process Research and Development』で先頃発表した学術論文で、化学工学に特化する英国のベーパーテック社が開発したフローケミストリー技術を利用することで乳癌治療薬タモキシフェンの製造が飛躍的に進歩する可能性について述べられています。

「Continuous flow-processing of organometallic reagents using an advanced peristaltic pumping system and the telescoped flow synthesis of (E/Z)-tamoxifen (最先端の蠕動ポンプシステムおよび [E 体 / Z 体] タモキシフェンのテレスコープ式フローシンセシスを用いる有機金属試薬の連続フロープロセス)」と題した論文で紹介されているこの研究の主な成功点は、有機金属試薬の処理を可能にするベーパーテック社の E シリーズ・フローケミストリー・システムを利用したことです。

レイ教授の研究グループによる論文では、5 秒に 1 投与量の速度でタモキシフェンを製造するテレスコープ式の連続フロープロセスが紹介されています。

2013 年 6 月に英国国立医療技術評価機構 (NICE) は、乳癌のリスクグループに属する女性は乳癌発症を防ぐ作用のあるタモキシフェンを服用すべきとの勧告を行っています。

研究内容を具体的にみると、化学的な耐性を備える蠕動ポンプシステムであるベーパーテック社の新開発 V-3 ポンプが高反応性物質を連続注入できるプロセスの中心を占めており、そのため、励起反応性中間体の使用が可能になります。そうした反応性化学物質の有用性を活かして、乳癌治療のホルモン療法に用いられるタモキシフェンが調合されます。

n-ブチルリチウム、グリニャール試薬、水素化ジイソブチルアルミニウム (DIBAL-H) などの有機金属試薬を注入する際のこれまでの方法には、空気と水分に感応するがゆえに、いくつもの困難が伴いましたが、V-3 ポンプではこうした問題はありません。

蠕動運動の原理をもとに、V-3 ポンプは最大圧力 10 バールでのスムーズなフローのほか、空気が充満したパイプからの自動プライミングを実現できるように設計されています。

V-3 ポンプ内の湿った部分はわずかで、無水溶剤を使って簡単かつ急速に乾燥させることができます。試薬は隔膜で密閉されたボトルから直接フィードでき、自燃性の試薬を手動処理する必要がなくなります。

V-3 には逆止弁やスライディングシールがなく、少量の水分が原因で不溶性塩の懸濁粒子が産出されることがあっても、プロセスに問題は生じません。

ケンブリッジ大学のレイ教授率いる研究グループのプロジェクトに参加したダンカン・ブラウン氏は、博士課程を修了した経験豊かなフローケミストリーの研究者です。彼はこうコメントしています。「V-3 ポンプを使うことによって、これまでのフローケミカル反応を、かなりの量の原料を製造できる実に連続的なプロセスへと拡張できるようになりました。有機金属種を注入するという単純な方法で、以前は困難だった反応と反応性を利用できるようになったのです」

ベーパーテック社のアプリケーション・スペシャリスト、アンドリュー・マンスフィールド氏はこう説明します。「ケンブリッジ大学のこの論文は、フローケミストリーにおける飛躍的な進歩を紹介する非常に重要なものです。これには V-3 ポンプを組み込んだ弊社の E シリーズ・システムが使われていて、これがプロセス全体の重要な構成要素であることが証明されています」

同氏は、「これは、フローケミストリー分野における技術的な革新が、いかにして医薬品をはじめとする様々な業界向けにより効果的で効率性の高い製造ソリューションを提供できるかを示す典型的な例です」と締めくくっています。

詳細情報:www.vapourtec.com
以 上

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